改葬の手続きを間違えると、当日に遺骨が取り出せない状態になります。法律上、改葬許可証なしに遺骨を移動させることは禁止されており、「墓地、埋葬等に関する法律」第5条に基づく無許可改葬は刑法第189条(墳墓発掘罪)に抵触し、2年以下の懲役の対象になります。
私は大手葬儀会社のWeb事業部に3年在籍し、月数千万円超の広告運用・年間1,000件以上の葬儀集客に関わりました。改葬手続きのトラブル事例を数多く見てきた経験から、この記事を書いています。
この記事を読むと、次の3点がわかります。
- 改葬許可証の取得に必要な書類と、正しい申請先
- 間違いやすい「遺骨の数と必要な通数」の関係
- 手続きが止まる典型的な失敗パターンとその回避策
改葬手続きの全体像を3分で把握する
改葬と墓じまいの違い
改葬はお墓の引越し(遺骨を別の場所に移すこと)、墓じまいはお墓を撤去して更地にすることです。多くの場合、墓じまいには改葬が伴います。この記事では「改葬許可証の取得」という行政手続きに絞って解説します。
改葬手続きの全体フロー
まず全体の流れを把握してください。ステップ1が完了していないとステップ3が進まない、という依存関係があります。
| ステップ | やること | 相手 | 目安期間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 改葬先を決める | 新しい霊園・納骨堂等 | 1〜3ヶ月 |
| 2 | 現在のお墓の管理者に連絡・埋蔵証明書を取得 | 現在の寺院・霊園 | 1〜2週間 |
| 3 | 改葬先から受入証明書を取得 | 改葬先の管理者 | 1〜2週間 |
| 4 | 改葬許可申請書を入手・記入 | 現在のお墓がある市区町村役所 | 即日 |
| 5 | 3種類の書類を揃えて役所に提出→改葬許可証を受け取る | 現在のお墓がある市区町村役所 | 即日〜数日 |
| 6 | 閉眼供養・遺骨の取り出し・墓石撤去 | 僧侶・石材店 | 1日 |
| 7 | 改葬先に納骨 | 改葬先の管理者 | 1日 |
申請先は「自分が住んでいる市区町村」ではありません。「現在のお墓がある市区町村」が申請先です。これを間違えて自宅近くの役所に行き、窓口で跳ね返されるケースが多いため注意してください。遠方にお墓がある場合は、郵送申請が可能な自治体もあります。事前に電話で確認しておくと無駄足を防げます。
改葬許可証の取得に必要な3つの書類
改葬許可証を取得するために必要な書類は3種類です。「どこで取得するか」「費用」「よくある失敗」をセットで確認してください。
| 書類名 | どこで取得するか | 費用目安 | よくある失敗 |
|---|---|---|---|
| 埋蔵証明書 | 現在のお墓の管理者(寺院・霊園) | 300円〜1,500円 | お寺との関係が悪化していると発行を渋られるケースがある |
| 受入証明書 | 新しい改葬先(霊園・納骨堂等) | 基本0円 | 改葬先が未決定だと取得できない(ステップ1が先) |
| 改葬許可申請書 | 現在のお墓がある市区町村役所 | 0円〜1,000円程度 | 申請先の役所を間違える・遺骨の数分用意し忘れる |

最も見落とされる落とし穴「遺骨1体につき1通」
改葬許可証は遺骨1体につき1通必要です。お墓に先祖の遺骨が5体いれば、改葬許可申請書は5枚必要です。お墓1つに対して1通ではありません。これを知らずに手続き当日に遺骨が取り出せなくなったケースが実際にあります。事前に現在のお墓の管理者に「何体の遺骨が納められていますか」と確認しておくことが、手続きをスムーズに進める最重要ポイントです。
改葬許可申請書の記入で間違いやすい3点
記入時に迷いやすいポイントを3点整理します。事前に確認しておくと、窓口でのやり取りがスムーズになります。
- 「申請者」は墓地使用者(名義人)本人が原則。名義人以外が申請する場合は委任状が必要になる自治体が多い
- 「死亡年月日」がわからない場合は「不詳」と記入してよい
- 「改葬の理由」は「新しく墓地を購入したため」などシンプルな記載でよい。複雑な事情は書かなくていい
手続きが止まる典型的な失敗パターン4つ
「どこで止まるか」を事前に知っておくだけで、トラブルの大半は防げます。以下の4パターンは実際に頻発しているケースです。
改葬先が決まっていないのに手続きを始める
受入証明書は改葬先が決まらないと取得できません。改葬先を確定させることがステップ1です。先に役所に行っても手続きは進みません。「受入証明書がなければ改葬許可証は発行されない」という順序を守ってください。
お寺への連絡より先に石材店に工事を依頼する
改葬許可証が手元にない状態では、石材店は墓石の撤去工事を行えません(法律上の義務)。先に工事を依頼して日程を押さえても、改葬許可証がなければ当日キャンセルになります。改葬許可証の取得が完了してから、石材店に工事日程を確定させてください。
申請先の役所を間違える
最も多いミスです。申請先は現在のお墓がある市区町村の役所です。自分が住んでいる市区町村の役所ではありません。遠方にお墓がある場合は、郵送申請が可能な自治体もあります。事前に電話で確認してください。
遺骨の数より少ない改葬許可申請書しか用意しない
前のh2で詳しく説明したとおりです。お墓の中に何体の遺骨があるかを必ず事前確認してください。管理者に直接聞くのが最も確実です。
改葬手続きにかかる費用
「改葬 手続き」で知りたい費用は、行政手続きにかかる費用のみです。以下に整理します。
| 費用の種類 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 埋蔵証明書の発行手数料 | 300円〜1,500円 | 寺院・霊園によって異なる |
| 受入証明書の発行手数料 | 基本0円 | 改葬先によって異なる |
| 改葬許可申請書の手数料 | 0円〜1,000円程度 | 自治体によって異なる |
| 合計の目安 | 300円〜2,500円程度 | 行政手続き費用のみ |
上記は行政手続きのみの費用です。改葬全体の費用(石材店費用・永代供養費用など)は別途かかります。全体費用の相場は以下の記事で詳しく解説しています。
ケース別の手続きの注意点
遺骨を自宅に持ち帰りたい場合
一部の自治体では「自宅」を改葬先として改葬許可証を発行するケースがあります。ただし自宅保管は正式な埋葬ではないため、その後で別のお墓に納骨したくなった場合に手続きが複雑になります。最終的な供養先を決めてから手続きを進めることを推奨します。
土葬のお墓を改葬する場合
土葬の遺骨を改葬する場合、通常の改葬許可証に加えて「火葬許可証」も必要です。土葬地から遺骨を掘り起こし、火葬を行ってから改葬します。誰が埋葬されているかを知っている立会人が必要なケースもあります。事前に市区町村の担当窓口に確認してください。
申請者が遠方に住んでいる場合
現在のお墓が遠方にある場合、郵送で改葬許可証を申請できる自治体があります。ただし全ての自治体が対応しているわけではないため、事前に電話で確認してください。手続きを代行業者(墓じまい代行・行政書士)に任せることも可能です。
よくある質問
Q1. 改葬許可証に有効期限はありますか?
改葬許可証自体に有効期限はありません。ただし、改葬先のお墓の使用契約に期限が設けられているケースがあるため、改葬先の管理者に使用期限の有無を確認しておくことを推奨します。許可証は大切に保管してください。
Q2. 改葬許可証を紛失した場合はどうなりますか?
再発行は難しいケースが多いため、慎重に保管してください。紛失した場合は、改葬許可証を発行した市区町村役所に相談してください。ケースによって対応が異なるため、役所に直接確認が必要です。コピーを手元に残しておくことを習慣にしてください。
Q3. お寺が埋蔵証明書を発行してくれない場合はどうすればいいですか?
発行拒否は法律上問題のある行為です。まず丁寧に理由と状況を説明して交渉してください。それでも応じない場合は、その寺院の宗派の本山または行政書士に相談してください。最終的には自治体の担当窓口に相談すると、具体的な対処法を教えてもらえる場合があります。
Q4. 手続きを全部代行してもらえますか?
墓じまい代行業者・行政書士が対応しています。行政書士は書類手続きの専門家で、遠方でも対応できます。墓じまい代行業者は書類手続きから石材店の手配まで一括で任せられます。ただし代行費用が別途かかるため、複数社に見積もりを取ることを推奨します。
まとめ
この記事で解説した内容を整理します。
- 申請先は「自分が住む市区町村」ではなく「現在のお墓がある市区町村」
- 必要書類は埋蔵証明書・受入証明書・改葬許可申請書の3種類
- 改葬許可証は遺骨1体につき1通(お墓の数ではなく遺骨の数で決まる)
- 改葬先を決めないと受入証明書が取得できないため、ステップ1が最重要
- 行政手続き費用は300円〜2,500円程度(改葬全体の費用は別途かかる)
改葬の手続きは、書類の順序と申請先を正しく理解すれば難しくありません。ただし遠方のお墓・複数の遺骨・お寺との関係が複雑な場合は、代行業者への依頼が時間と手間の節約になります。


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